ビジネスチャンスは、1994年に創刊された起業家や経営者などのビジネスパーソン向け企業・新規事業の専門情報誌です。主にフランチャイズや代理店ビジネス、ECに関する取材を行い、新たなビジネス情報を掲載しています。
この記事は、ビジネスチャンス 2020年10月号の記事になります。
Profile
アカウンタックス代表取締役社長
山口真導氏
公認会計士・税理士。経理代行のアカウンタックス代表。ビズ部・部長。債権の入金確認や振込業務を含む、経理の全機能を提供し、キャッシュ・フロー改善に貢献している。毎月開催する節税セミナーには多くの経営者が参加して好評を博している。
リアルビジネスの半オンライン化
資金繰り改善の再良策は資金調達ではなく売上増です。
コロナ禍で最も悪影響を受けた業種の一つが飲食業です。コロナ禍で見た飲食店の事例を基に、売上増に向けて取り組むべきことを、ご紹介したいと思います。
他のリアルビジネスの業態の方は半オンライン化の事例として参考にして下さい。
多くの飲食店が採った普通の戦略
自粛期間中、多くの飲食店が弁当や料理のテイクアウトを始めました。
悪い方法ではありませんが、これ「だけ」では、目先の現金収入が見込めるだけです。テイクアウトをしながら、アフターコロナの布石を打ったお店もありました。
自力での集客が難しい飲食業
飲食業で最大の課題は、お客様が来店下さるかどうかです。チラシを配る、タウン誌やネットに広告を出す、がよくある集客方法です。
しかし、これらもやった方が良いだけで、来店客数との直接的な因果関係はよく解りません。いわば他力本願な方法です。
飲食業の集客を自力でやる唯一の方法は顧客リストの活用です。
顧客リストとしては、LINEアカウントや、お名前とメールアドレスが入手出来るとよいでしょう。
LINEやメールならお店側から情報を流しても、不要であれば無視やブロックしたり登録解除したりすれば良いので、お客様側にもそれほど負担はありません。
しかし、ふだん来店されるお客様がほとんど登録してくれないという経験をされた方も多いはずです。
半オンライン化戦略とは
「テイクアウト」という好機が到来しました。
テイクアウトは、何も料理だけを持ち帰らせる必要はありません。必ず顧客情報獲得に繋がるチラシを持ち帰って頂くのです。
例えば「次回、LINE登録者限定メニューがテイクアウト出来る」とか「5千円以上のお買い上げで登録者限定特典」を設定することで登録を促すのです。
このリストはコロナ禍が終わっても、半永久的に来店促進のために利用できます。
お店が空いている日に登録者限定での新メニュー試食会の開催など、お店のキャパシティを超えて売上を上げることすら可能にするのが「顧客リスト」なのです。
オンラインビジネスの常識はリアルビジネスでの非常識
顧客リストから始めるビジネス展開は、オンラインの世界では常識ですが、リアルビジネスの世界では「出来たら良いね」くらいに思われているでしょう。
しかし、テイクアウトの導入をきっかけに顧客リスト作りを始めた飲食店が増えたことは注目に値すると思います。
お客様の「今日の晩ご飯、何を食べようか?」という選択肢に確実に入り、かつ、高い確率で選ばれるお店になるためには、「顧客リスト」の利活用が最短距離だと思います。
通常営業中の飲食店オーナーへ
既に通常営業中の方も顧客リストを作る口実を最後にお伝えします。それはメニューのオンライン化です。
紙のメニューの共用からの感染を防止するために、お客様ご自身のスマホにメニューを表示し注文して頂くようにします。
メニューを表示させるためにはURLを送る必要があります。これでLINEアカウント等を入手出来ます。
こうしたやり方に精神的・物理的に抵抗のある方は、昔からある「LINE登録で生ビール一杯サービス」でも良いでしょう。
とにかく「顧客リストがあったら良さそうだなぁ」という緩い対応ではなく、積極的に活用する前提で、しっかり取り組んで頂きたいと思います。
どんな給付金や助成金よりも欲しいのは売上だと思います。顧客リストは仕事を増やしますが、それ以上に売上に貢献してくれます。
ライバルは、その面倒な作業をしながら前に進んでいます。追いつき追い越すために一番楽な方法は真似ることです。
さぁ、始めましょう。
※顧客リストを作成する場合には、個人情報の利用目的の明示その他、個人情報保護法の遵守が必須となりますのでご注意下さい。
この記事は、ビジネスチャンス 2020年10月号の記事になります。