飲食店を経営する上で定期的におこなわなくてはいけない「棚卸し」。
「棚卸しって何のためにやるの?」
「棚卸しって必ずやらないといけないの?」
など、棚卸しに関して疑問を感じている方も多いのではないでしょうか?
そこでこの記事では、飲食店の棚卸しについて紹介していきます。
- 棚卸しの概要
- 棚卸しをおこなう理由
- 実際に棚卸しをおこなうときに抑えておきたいポイント
などについて詳しく解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
飲食店の棚卸しとは
棚卸しは、店内の在庫を数える作業です。
在庫を抱えるような事業をおこなっている場合、定期的に棚卸しを実施して店内の在庫状況を把握しなくてはいけません。
飲食店は棚卸しとは無縁に思えるかもしれませんが、仕入れた食材のうちお客さんに提供せずに残っている食材は「在庫」として取り扱われるため、棚卸しの対象となります。
飲食店での棚卸しは月末におこなうのが一般的です。
仕入れた食材を月末の棚卸しまでにすべて使い切ってしまえば棚卸しは必要ないわけですが、どれだけ丁寧かつ慎重に仕入れをおこなっていても食材を綺麗に使い切るのは不可能です。
そのため、在庫は必ず発生します。
「棚卸しは月に一回、必須でおこなわなくてはいけないもの」と認識しておくようにするといいでしょう。
飲食店が棚卸しをおこなう理由
飲食店で棚卸しをおこなう主な理由としては、以下の4点があげられます。
- 在庫の状況を把握するため
- 在庫の品質を把握するため
- 店舗の仕入れ状況や傾向を把握するため
- 原価率を把握するため
それぞれ詳しく解説していきます。
在庫の状況を把握するため
飲食店が定期的に棚卸しをおこなう目的の中でも特に重要度が高いと言えるのが、「在庫を把握するため」というものです。
飲食店は、食材のストックがなくなるとお客さんに料理を提供することができません。
お客さんに料理を提供できないと収益もあげられないため、「在庫がない」という状況は避けなくてはいけません。
そのため、定期的に棚卸しをおこない、在庫の状況を確認しておく必要があるのです。
在庫の品質を把握するため
飲食店で棚卸しの対象となるのは「食材」ですが、食材はお客さんに料理として提供するものです。
そのため、在庫の状況だけでなく品質も把握しておかなくてはいけません。
- 消費期限を過ぎてしまっていないか
- 色味が変化してしまっていないか
- においが変化してしまっていないか
など、棚卸しで商品の在庫を確認しながら、食材の状態についてもしっかりと確認する必要があります。
状態のよくない食材を提供してしまうと食中毒など大問題に発展してしまう可能性があるので、棚卸しの機会を利用して品質管理をし、そういった事態を避けるようにしましょう。
店舗の仕入れ状況や傾向を把握するため
棚卸し前におこなった食材の仕入れデータと照らし合わせながら棚卸しをおこなうと、店舗の仕入れ状況や傾向を把握することもできます。
在庫の減り具合を見て、仕入れを適切におこなえているかどうかを判断できるため、過剰な仕入れを抑制できます。
また、食材の減り具合で人気のメニューとそうでないメニューも明確になり、店舗運営への活用も可能です。
原価率を把握するため
棚卸しによって正確な在庫が把握できるようになると、原価率を把握できるようになります。
原価率は売上に対する原価の比率をあらわしたもので、飲食店が健全な経営をおこなっていく上で欠かすことのできない指標の一つです。
飲食店の原価率は30%が目安になるので、棚卸しによって原価率が30%以上になってしまっているメニューを発見できれば、提供価格の見直しや食材の量の調整などによって健全な状態に調整できます。
原価率は物価とともに変動し、売上にも直結するため、原価率を把握するためにも棚卸しは定期的に実施する必要があります。
飲食店での棚卸しの流れ
棚卸しをスムーズにおこなう上で把握しておきたいのが棚卸しの流れについてです。
飲食店での棚卸しは、次の流れでおこなっていきます。
- 棚卸表を作る
- 在庫を確認して棚卸表に記入する
- 棚卸表をまとめる
それぞれの工程について詳しく解説していきます。
1. 棚卸表を作る
棚卸しをする場合、いきなり在庫をカウントし始めるのではなく棚卸表を作るところから始めるようにしましょう。
年末におこなう棚卸しは確定申告用の資料として棚卸表の作成と保管が必要になるため、毎月の棚卸しでも棚卸表を作成して対応に慣れておくべきです。
また、きちんとしたフォーマットを用意しておいた方が作業がしやすくなり、数え間違いや記録違いなどのミスも発生しにくくなります。
項目に決まりはありませんが、以下の4つの項目は用意しておくべきでしょう。
- 品名
- 種類(食材か飲料かなど)
- 在庫数
- 仕入れ価格
また、食材の状態などを自由に記入できる備考欄を設けておくと、仕入れ状況や在庫状況の把握がよりおこないやすくなります。
2. 在庫を確認して棚卸表に記入する
棚卸表を作成したら、食材や飲料の在庫を確認して棚卸表に記入していきます。
個数や重さなど、食材によって在庫の数え方が異なるので注意してください。
ここで注意したいのが、仕込みをおこなっている状態の食材についてです。
仕込みをおこなっている食材は手を加えてしまっているため、在庫としてカウントしないと勘違いされてしまう傾向にありますが、お客さんに提供していない食材はすべて棚卸しの対象となります。
そのため、仕込みをおこなっている状態の食材についても忘れずにカウントするようにしてください。
3. 棚卸表をまとめる
食材やドリンクの在庫をすべてカウントしたら、在庫の合計数や金額をまとめます。
これにより、過剰な在庫を把握できるようになり、普段の仕入れが適切におこなわれているかどうかを把握できるようになります。
また、棚卸しをおこなう中で消費期限を過ぎてしまっていたり、傷んでしまっている食材やドリンクがあれば、誤って提供してしまうのを防ぐためにも処分するようにしましょう。
\pick up/
飲食店オーナー様・独立開業を目指す方へ
「事業規模の拡大をしたい」
「自分のお店を開きたい」
飲食系FC専門&利用満足度No.1(※)&掲載ブランド数300件以上
(※日本トレンドリサーチ 2021年12月実施調査による)
飲食系フランチャイズの情報比較は、フーズルートにお任せください!
【資料請求は完全無料】
希望の業種から
フランチャイズ案件を探す
年末の在庫と確定申告
飲食店を開業して利益が出始めると、所得を申告するために確定申告をおこなわなくてはいけなくなります。
翌年に納める税金は確定申告で提出した情報によって算出されるため事業主は確定申告を必ずおこなわなくてはいけません。
飲食店の経営者が確定申告をおこなう場合、注意しなくてはいけないのが在庫についてです。
先述したとおり、飲食店が仕入れて保管している食材は在庫として取り扱われます。
12月31日までに消費しきれずに保管している食材の在庫は、次の年の期首棚卸高として取り扱われますが、期首棚卸高になるとその年の経費として計上できません。
経費として計上できないため、その分翌年の税金が高くなってしまう可能性があります。
もちろん翌年の経費として計上できるので無駄になってしまうことはありませんが、経費計上できない在庫を大量に抱えて年をまたぐのは得策ではありません。
定期的に棚卸しをおこない、なるべく不必要な在庫を発生させない店舗経営を心がけましょう。
飲食店が棚卸しをおこなうときに覚えておきたい4つのポイント
飲食店が棚卸しをおこなうときに覚えておきたい重要なポイントとして、4点があげられます。
- 毎月実施する
- マニュアルを用意する
- 棚卸表は保管する必要がある
- 「商品」と「消耗品」は取り扱いが異なる
それぞれ詳しく解説していきます。
毎月実施する
棚卸しは確定申告のためにおこなうものなので、「年末だけ実施すればいいや」と考える経営者は少なくありません。
しかし、年に一度だけの対応になるとスムーズに進められない可能性がある上、ミスしてしまう可能性もあります。
間違った情報で確定申告をおこなってしまうとペナルティを課せられてしまう可能性があるため、毎月実施するようにして慣れておくべきです。
何より、在庫状況や品質、原価率の把握など店舗の売上を向上させるための施策として重要なので、年末だけでなく毎月おこなうようにしましょう。
マニュアルを用意する
棚卸しは店内の在庫をカウントして記入するだけの作業なので、特別難しいことはありません。
しかし、簡単な作業とは言え、作業に対しての慣れは必要です。
そこでぜひ用意しておきたいのが棚卸しの作業マニュアルです。
棚卸しの具体的な作業内容や手順を記載したマニュアルを用意して、誰が棚卸しをおこなうことになってもスムーズに対応できるようにしておきましょう。
マニュアルの作成は手間がかかりますが、担当者が変わったとしてもその都度時間をかけて指導する必要がなくなるので、長い目で見た場合、手間や時間の短縮にもつながります。
棚卸表は保管する必要がある
先述したとおり、年末におこなう棚卸しの情報は確定申告に必要です。
在庫の状況を記した棚卸表を提出する義務はないため、「確定申告が完了したら棚卸表を処分しても問題ない」と捉えてしまっている方も少なくありませんが、棚卸表は処分せずに保管しておく必要があります。
棚卸表の保管期限は青色申告の場合であれば7年と定められており、白色申告の場合は5年間の保存が義務づけられています。
棚卸表を保管せずに処分してしまうと、万が一税務調査が入ってしまった場合、在庫の状況を説明・証明するための資料がないということになり、問題になってしまいかねません。
税務調査は規模の小さな店舗に対しても分け隔てなくおこなわれるもので、いつ対象になってもおかしくありません。
定められた期間内は必ず保管しておくようにしましょう。
「商品」と「消耗品」は取り扱いが異なる
飲食店で棚卸しをおこなう場合に頭を悩ませることになるのが、どこまで在庫としてカウントするべきなのかについてです。
飲食店を経理していると、食材の他に調味料や割り箸などの備品を購入して取り扱うため、どこで線引していいかわからなくなってしまうことがあります。
確定申告の際に計上するべきなのは食材や飲料の在庫のみです。
料理に使用する肉や魚、野菜などの食材や提供するドリンクの在庫は「商品」という扱いになり、先述したとおり在庫をその年の経費に計上することはできません。
一方、調味料や割り箸などの備品は「消耗品」に分類されるため、購入した時点で経費として計上できます。
まとめ
飲食店を経営する上でおこなわなくてはいけない作業の一つである「棚卸し」について紹介してきました。
棚卸しは手間のかかる面倒な作業ですが、確定申告のために必ずおこなわなくてはいけません。
また、店舗の経営状況を把握するために年末だけでなく毎月おこなうのが基本です。
今回紹介させてもらった内容を参考にしていただき、棚卸しをスムーズに行いましょう。
誰でも棚卸しを対応できるような状態にしておくと、スタッフ一人ひとりの負担も減るので、まずはマニュアル作成から始めてみてはいかがでしょうか?