「飲食業を始めるために店舗を借りよう!」と検索したときに、「重飲食営業可」「軽飲食のみ可」という文面がよく出てきます。
いったい、重飲食とはどのような業態を指すのでしょうか?
この記事では、重飲食と軽飲食の違いや開業方法、開業に関する注意点などを詳しく解説します。
飲食業に興味があるけれど業態をどうするか迷っている方にとっては、非常に有意義な記事となっています。ぜひ最後まで読んでみてください。
そもそも「重飲食」とは
重飲食とは、飲食業の中でも調理の際に油や火を使用することで煙やにおいの多く出る業態を指します。焼肉店や中華料理店、ラーメン店などが代表的な業態です。
- 調理の際に火力が必要となるため壁や天井は難燃性の壁紙を使用する
- 廃油が排水に流れないようにトラップを設置する
- 煙やにおいがそのまま外部に出ないようにする
など、設備も整える必要があります。
「軽飲食」との違い
重飲食に対して、調理の際に煙やにおいが出にくく、主に飲料や軽食を提供する業態が軽飲食です。カフェやバー、スナックなどが軽飲食に該当します。
提供される食事については、いわゆる家庭用のコンロで調理できる程度の軽食となります。
そのため、排水や排気については重飲食ほど大きな設備は必要ありません。
開店するにも費用が少なく済み、飲食業初心者には向いている業態だといえます。
明確な定義はなく線引きが微妙
先ほど説明した通り、大まかには業態の違いによって分けられています。
しかしその分類方法では、営業している業態ですべてをきっちりと線引きするのは無理のあるケースが出てくるのです。
たとえば喫茶店は、多くの場合で軽飲食に分類されます。ただし、自家焙煎でコーヒーを提供する店舗は、火力を多く必要とする上に煙やにおいも出るため、重飲食とされる場合があるのです。
パンやケーキを自店舗の窯で焼いて提供するカフェなども、同様のケースとなります。
軽飲食か重飲食かの判断については、貸主や不動産仲介業者にゆだねる部分が非常に大きくなります。
重飲食の開業方法
重飲食店でも軽飲食店でも、開業に当たって準備する資格に違いはありません。
- 食品衛生責任者の資格取得
- 飲食店営業許可の取得
- 店舗規模によっては防火管理者の取得
重飲食と軽飲食で大きく違うのは、店舗の規模や調理・換気の設備となります。
一般的に重飲食のほうが設備にかかる費用は大きく、工事期間は長くなります。
重飲食を開業するにあたり気をつける点
重飲食の店舗を開業するには、いくつか注意しておくべき重要な点があります。
重飲食不可の物件がある
物件によって重飲食の営業が不可とされているところが、実は結構な割合であります。
大きな理由としては、以下の2点です。
1.建物の仕様上の問題
1つ目は、
- 電気やガス、水道などのインフラ面で重飲食の営業に耐えられない
- 重飲食に必要な設備が設置できない
など、建物の仕様上に問題のあるケースです。
このような場合貸主の許可さえあれば、大がかりな設備投資をすれば開業できるかもしれません。「どうしてもこの物件で開業したい」というならば、それでもよいでしょう。
しかしかかる費用と期間が膨大になるため、現実的とはいえません。
諦めて他の物件を探すのが、賢明な方法だといえます。
2.貸主の意向
貸主の意向によって重飲食が不可とされる物件は、かなり多く見られます。
- 煙やにおいが出て近隣とトラブルになることを避けたい
- 物件に負担がかかるため劣化が進む
- 火災などのリスクが大きい
- 建物や他テナントとのイメージが合わない
など、理由はさまざまです。
重飲食を営業するために必要な設備工事は大がかりになることが多く、そういった面でも嫌がる貸主は多いのが実情です。
貸主の意向で重飲食ができない物件の場合、問題点をクリアにして交渉すれば開店できる可能性はあります。
煙やにおいの対策、排水や廃油の対策を万全にし、近隣から問題が出ないような状態にするのを確約できれば、貸主からの許可を得やすくなるでしょう。
しかしあまりにも無理を通すと、トラブルが起きた際に厳しいペナルティを科される可能性があります。
貸主から許可を得ていない業態に勝手に変更するなどすれば、訴訟問題に発展することも考えられます。
このようなことも踏まえ、もし重飲食の許可が得られた場合でも営業には細心の注意を払うことが必要です。
居抜き物件は設備を確認する
居抜き物件とは、店舗の設備がそのまま残っている店舗物件です。
もともと重飲食を営業していた店舗の居抜き物件であれば、開業できる可能性は非常に高くなるでしょう。
同じ業態の店舗を考えているのであれば、設備投資も最小限で済むので資金面でも有利となります。ただし設備については使用頻度が高かった場合、経年劣化が考えられます。
とくに排気ダクトや排水設備などが詰まっている場合は、火災や水漏れなど大きな事故につながる可能性が否めません。
設備面については、契約する前に十分チェックしておきましょう。
条件のよい居抜き物件は数が少なく、競争率が非常に高くなります。目をつけたら早めにチェックしておくようにしましょう。
重飲食を営業していた居抜き物件でも、業態が変われば貸主から許可が下りないケースが考えられます。
たとえば中華料理店やラーメン店なら問題ないけれど、焼肉店や焼鳥店など煙が多く出る店舗は不可といわれることがあるかもしれません。
もし許可が出た場合でも、厨房や排気のシステムが違うため、設備を大幅に変更する必要が出てきます。
居抜き物件の場合でも業態変更するならば、ある程度の費用や期間がかかることはあらかじめ想定しておきましょう。
まとめ
ここまで、重飲食についてくわしく説明しました。
重飲食を開業するには設備面での費用がかかり、営業可能な物件も限られてしまいます。いくら立地条件がよくても、営業ができなければ意味がありません。
また重飲食が営業可能な物件は数が少なく、競争率も高くなります。
そういった条件などをよく検討してみて、開業する業態を決めるのが賢明といえるでしょう。