ビジネスチャンスは、1994年に創刊された起業家や経営者などのビジネスパーソン向け企業・新規事業の専門情報誌です。主にフランチャイズや代理店ビジネス、ECに関する取材を行い、新たなビジネス情報を掲載しています。
この記事は、ビジネスチャンス 2020年08月号の記事になります。
Profile
藤田一郎
上智大学国際学部および南カリフォルニア大学国際学部出身。1980年にI. Fujita International, Inc.を設立。1986年から米国フランチャイズ案件の日本導入事業に着手。2000年以降から日本フランチャイズ案件の米国導入事業及び加盟店開発を行う。米国のアントプレナー誌からExcellent Entrepreneur Awardも受賞。最も米国フランチャイズ事情に精通している人物として認められ、近年は、フランチャイズのグローバル化に貢献し、多方面で講演を実施。日本フランチャイズ及び小売企業の北米進出サポートやコンサルテイングを行っている。
ゴーストキッチンのパイオニア、Zuul Kitchen
コロナウイルスの問題が出る前から、ゴーストキッチン(仮想キッチン)のビジネスモデルは収益と効率性の高いレストラン経営ができるとして関心が高まっていた。
シェアリングオフィスの大手WeWorkは企業に会議室を提供する。同じように、ゴーストキッチンは、レストランにキッチンスペースと必要な機材、運用サポートを提供し、サービスフィーを取るというビジネスモデルだ。
キッチンスペースを貸し出すだけでなく、食器洗いからデリバリー会社のピックアップにまで対応している。
ゴーストキッチンはソーシャルメデイアやアプリを独自に活用し、デリバリーの顧客データを構築し、各キッチンブランドの売上げ向上に貢献している。
ゴーストキッチンのパイオニアの一つでもあるZuul Kitchenはニューヨークのデリバリービジネスとしてスタート。
レストラン経営者にとって賃料の高いニューヨークで開業するのは難しく、成長の妨げになっていた。
デリバリービジネスは、従来型のレストランでも既に実施されていた。
しかしその多くはデリバリー向けの効率の良いものに設計されておらず、結果的にはレストランの運営に負担をかけていた。
Zuul Kitchenのビジネスモデルは、スムーズなオペレーションで効率的なデリバリーサービスを実現することで、各ブランドが新しい収益チャネルと顧客を獲得できるような支援を最大のミッションとしている。
共同キッチンのデザインから受賞歴のある料理の方向性まで、Zuulはレストランのリスクを軽減し、デリバリーを最適化するためのさまざまな運用および戦略的サービスでサポート。
急成長するデリバリー・テイクアウト市場において、シェア拡大を実現するために、Zuulは、迅速に市場に参入出来るユニークなノウハウとシステムを参加企業に提供している。
Zuulが提供する主なサービス
- 排気、防火のフードを備えたキッチンのインフラ設備の提供
- メニューの相談
- キッチン機器のカスタマイズ
- POS・配達技術の相談
- オンサイトによるデリバリー商品のフルフィルメント
- コモンエリア労働サポート
- 食器洗い
Zuulの競合、Kitchen United社
Zuulの競合でもあり、シカゴとカリフォルニアに拠点を持つゴーストキッチン会社はKitchen United社。
Zuulと異なり、知名度が高いレストランから新鋭のレストランブランまで幅広いレストランブランドを対象に、ゴーストキッチンを展開している。
Kitchen Unitedもレストラン経営者と飲食業界の専門家で構成されており、Googleベンチャーズと他の投資家からの資金調達による5000万ドルの支援を受けている。
CEOのジム・コリンズ氏は2020年までに米国中の都市にさらにのキッチンの拠点をオープンし、5000のレストランにスペースとサービスを提供すると発表している。並行してデリバリーサービスの大手Grubhub、DoorDash、およびUber Eatsとも連携している。
ZuulやKitchen Unitedのようなゴーストキッチンの出現によって、レストランビジネスのスタートアップの形態が変わりつつある。
今後のレストランは高価な不動産に投資する必要がなくなった。キッチンスペースのみ確保し、デリバリービジネスにフォーカスした収益性の高いモデルを作成しようとしている。
スペースの需要は非常に高く、キッチンセンターは来年まで空きがなく利用できない程の人気である。
Chick-fil-A、The Halal Guys、Dog Hausといった知名度の高いレストランも、デリバリー市場へ参入しており、Kitchen Unitedのゴーストキッチンを活用している。
日本でもゴーストキッチン専門会社が設立されている。
コロナウイルスの影響もあり、収益性の高いデリバリービジネスへの飲食店の関心度、期待度は日に日に増してきている。
近い将来、ゴーストキッチンの本場アメリカから大手専門企業が日本進出するのも、そう遠い先ではないかもしれない。
この記事は、ビジネスチャンス 2020年08月号の記事になります。