ビジネスチャンスは、1994年に創刊された起業家や経営者などのビジネスパーソン向け企業・新規事業の専門情報誌です。主にフランチャイズや代理店ビジネス、ECに関する取材を行い、新たなビジネス情報を掲載しています。
この記事は、ビジネスチャンス 2021年06月号の記事になります。
インバンドや法人需要を追い風に、数年にわたって好調を維持してきた外食産業は、コロナ禍で大きなダメージを受けた。
中でもレストラン業態の状況は深刻で、大手を含めた主要チェーン各社は店舗の大量閉店を余儀なくされている。
だが、その中にあって、逆に出店攻勢を仕掛けているレストランがある。“次世代のファミレス”を謳った注目のチェーン「VANSAN(バンサン)」を取材した。
新しいコンセプトで進化しないファミレスに対抗
―― コロナ禍で多くのレストランチェーンが苦境に立たされているのを後目(しりめ)に、積極的に店舗を増やしています。
相原:現在、フランチャイズ店舗を含め、店舗を出店しています。他に、7月までに新たに店舗の出店が決定しています。
具体的な目標数字は申し上げられませんが、今後はフランチャイズの加盟募集に注力して、全国に店舗を出店していく計画です。
―― 御社が所属するダイニングイノベーショングループは、さまざまな業態の外食チェーンを展開しています。最近、立ち上げた、テイクアウト専門のハンバーガーチェーン「ブルースターバーガー」も話題になっています。ファミレス業態を開発するに至った経緯について教えて下さい。
相原:ファミレスはもともと、高度経済成長期に台頭した業態で、長い間、ファミリー層にとって特別な空間として重宝されてきました。私も子どもの頃は、家族で行くたびに高揚感を覚えました。
しかし、今は家族連れで食事ができる場所は他にいくらでもあるため、ファミレスはかつてほど、ファミリーにとって特別な場所ではなくなりました。
しかし、それにもかかわらず、ファミレスはなぜか当時からほとんど進化していません。我々はこの点に着目しました。
新たなコンセプトのもと、今までにない新しいファミレス業態を開発すれば、十分に勝機はあると考えたのです。
競合店の撤退が相次ぐ中、攻勢を仕掛ける次世代のファミレス
―― 具体的に、どの点が従来のファミレスとは異なるのでしょうか。
相原:まずは空間づくりが大きく異なります。
「VANSAN」は、従来のファミレスと高級イタリアンの間のファミリー層を顧客ターゲットに設定していて、その層の主婦を集客するためにオシャレで、それでいて居心地の良い空間づくりにこだわっています。
キーワードは「ナチュラル」です。
「コメダ珈琲店」を思い浮かべてもらえれば分かりやすいと思うのですが、木のぬくもりが感じられてとても居心地が良いですよね。あの雰囲気が理想です。
ただし、あまりやり過ぎると、かえってリラックスできなくなってしまうので、格好つけすぎないように注意しています。
▲ファミレスらしからぬオシャレなデザイン
―― 実際、どんな方の利用が多いのでしょうか。
相原:平日のランチタイムは、10人中9人が主婦で、残りは同伴の旦那さんです。年齢は30代から40代の方が中心です。
ディナータイムになると主婦は半分くらいに減り、その代わりご家族やサラリーマンの利用が増えます。
ただし、これはあくまでも平時のときで、コロナ期間中はランチタイムでもご家族での利用が多いですし、テレワーク中の女性の利用も増えました。
競合不在のエリアに出店、投資回収期間は2年
―― 今後は、フランチャイズに注力して店舗網を拡大していくということですが、これは業態を立ち上げた当初から計画していたことなのでしょうか。
相原:もちろんです。私は長年、グループの代表である西山知義のもとで、いろいろな形でFCに携わってきました。
業態を開発する際は、当然ながらFCを視野に入れています。
―― 開業には、どのくらいの初期費用がかかるのでしょうか。
相原:細かい数字は公表していませんが、居抜きであれば3000万円程度の投資が必要になります。
駅前でやる場合は35坪、ロードサイドでやる場合は50坪くらいの広さが最低でも必要です。席数は35坪の場合で60席、50坪の場合で70席になります。
ただし、駅前でやる場合は、競合の多い大きなターミナル駅は避け、住宅地に隣接する中小規模の駅に出店してもらうようにしています。
住宅街やロードサイドに特化し、コロナ禍で強みを発揮
―― イタリアンのお店は都心部にあるイメージが強いですが、なぜ「VANSAN」は、出店を住宅地に近い場所やロードサイドなどに限定しているのでしょうか。
相原:競合が少ないことと、都心部に比べて家賃が安く、投資を早く回収できるからです。
ただ、最初の店舗から狙い通りうまくいったこともあって、一時期、都心部にも積極的に出店していました。
しかし、やはり家賃が高い分、投資回収に時間がかかり、本来は2年で回収しなければならないところ、5年かかる店舗が出てきてしまいました。
それでも十分、優秀なモデルではあるのですが、場所によって回収期間がブレるのは、FCビジネスとしては好ましくありません。
それで都心部への出店はやめて、住宅街やロードサイドに絞るようにしたのです。
結果的に、コロナの影響からもいち早く回復することができ、それが今日の出店攻勢の原動力にもなっています。
―― 2年で投資回収するビジネスモデルということですが、売上はどのくらいを想定しているのでしょうか。
相原:あくまでも参考ですが、平日は1日あたり10万から15万円くらい、土日は20万円程度の売上を目標にしています。
客単価だと、平日はランチタイムで1500円、カフェタイムで2500円、ディナータイムで3000円、土日は時間帯に関係なく3000円くらいになります。
三毛作で効率良く売上を上げられるビジネスモデルになっています。
▲料理の盛り付けにもインパクトがある
―― すでにFC店が21店舗あります。加盟者の属性について教えて下さい。
相原:外食経験の有無を問わないこともあり、さまざまです。
中にはパチンコが本業の会社もありますし、物流会社が加盟しているケースもあります。
最初にも申し上げたように、すでにオープン予定の案件が多数控えています。
今後もこのペースを落とすことなく、店舗を増やしていければと思っています。
「レストラン」で募集中のフランチャイズ(FC)独立・開業情報一覧
この記事は、ビジネスチャンス 2021年06月号の記事になります。