たびたびメディアで取り上げられることもある飲食店のワンオペ営業。
ワンオペ営業は、大手の飲食店が実施して問題視されるケースもあります。
この記事では、飲食店のワンオペ営業について紹介していきます。
店舗の経営の成功と失敗に大きく関わるテーマでもあるので、これから飲食ビジネスをスタートさせたいと考えている方は参考にしてみてください。
ワンオペ営業とは
ワンオペ営業は「ワンオペレーション営業」の略称で、従業員が一人で店舗を切り盛りする状態を指す言葉です。
カウンターだけの店舗など、小規模な飲食店の場合一人で切り盛りしながら営業することも少なくありませんが、そういったケースにはあまり使われません。
どちらかと言えば、一人で切り盛りできる規模の店舗ではないにも関わらず、人手不足やコスト削減を理由に従業員を一人で働かせているようなケースを「ワンオペ」や「ワンオペ営業」と呼ぶ傾向にあります。
ワンオペ営業は違法?合法?
一人で飲食店を回すワンオペ営業は、以下のようなすべての業務を一人でにおこなう必要があり、労働環境の面などから問題視されることも少なくありません。
- 注文の受け付け
- 調理
- 配膳
- 片付け
- 洗い物
そこで気になるのが「ワンオペ営業は違法な行為なのか」という点についてです。
ワンオペ営業に違法性はありません。
仮にワンオペ営業で店舗を切り盛りしていたとしても、法律に抵触することはなく、営業停止の措置などの罰則が課せられることもありません。
飲食店がワンオペ営業で売り上げアップするコツ
違法性はないものの、たびたび問題として取り上げられるワンオペ営業。
ではワンオペ営業を飲食店で実施する上で、売り上げをアップするにはどうすればよいのでしょうか。
飲食店がワンオペ営業で売り上げ増加させるためのコツは、次の3点があげられます。
- シンプルなメニューを採用する
- ワンオペでも回せる店作りをする
- ゴーストレストランとして営業する
それぞれのメリットについて詳しく解説していきます。
シンプルなメニューを採用する
ワンオペで営業する以上、調理するスタッフも1人しかいません。
そのためメニューは「シンプルなもの」「提供しやすいもの」をなるべく取り入れるようにすると良いでしょう。
また、調理方法が異なるメニューを何種類も出すこともかなりの負担となるので、ラーメンや寿司といったベースが同じ料理やコース料理を採用することでワンオペ営業がしやすくなります。
ドリンクメニューも提供までに時間がかからないものを用意することで、業務の負担が減ります。
ワンオペでも回せる店作りをする
ワンオペ営業をする飲食店は、レイアウトやオペレーション、動線などの店作りにも工夫が必要です。
レイアウト
料理をキッチンからテーブルまで運ぶフローを繰り返す行うことは、ワンオペ営業をする場合かなり過酷です。
ワンオペ営業の飲食店はカウンタースタイルがおすすめです。
キッチンとカウンターというシンプルな作りにすることで、調理をしながらお客様とコミュニケーションが取れるので、業務の負担・時間ともに削減することができます。
オペレーション
券売機やドリンクバー等のセルフサービスを導入することで、ホール業務が必要ないスタイルのお店にすることもできます。
また、タブレットや食洗機等を導入することで、業務を自動化・簡素化できるので、費用はかかりますが導入を検討しましょう。
厨房では営業前に仕込みをしておくことはもちろんですが、仕込みのストック場所や使用後の食器置き場などを作り厨房内のスペースにも「ゆとり」を持つことで、忙しい時でも心に余裕が持てるでしょう。
動線
重要なのは、キッチン内の動きやすさです。
ゴミ箱をどこに設置するかということから、食器の取り入れのしやすさ等、スムーズに業務ができる動線を目指した内装にしましょう。
ゴーストレストランとして営業する
実店舗を持たずにフードデリバリーのみで展開する「ゴーストレストラン」は、通常の飲食店とは異なり主な業務は調理のみとなるので、ワンオペ営業をする上では最適な業務形態です。
実店舗を持つ必要がないため、店舗の外装や内装にこだわる必要もなく、費用を抑えて始められる飲食店の新しい形として注目されています。
また、シェアキッチン等を使用することで、初期費用・設備投資も最低限に抑えることができます。
飲食店がワンオペ営業する際の注意点
経営者にとってさまざまなメリットをもたらしてくれるワンオペ営業ですが、実際に行う場合は注意しなければいけないこともあります。
飲食店がワンオペ営業する際の注意点として、5点があげられます。
- 質の高いサービスを維持する
- 本来やるべき作業をおろそかにしない
- 従業員の不満による離職
- 過労による体調不調
- 労働基準法に抵触しない環境作り
それぞれのデメリットについて詳しく解説していきます。
質の高いサービスを維持する
飲食店をワンオペで営業する場合、飲食店で提供するサービスに伴うすべての作業を一人でおこなわなくてはいけません。
来店したお客さんの案内や注文受付から提供までを一人でおこなわなくてはならず、調理もこなさなくてはいけません。
また、それらの合間に洗い物や会計、店舗の掃除も行うとなると、手が回らなくなるのは明らかです。
一つの業務に時間がかかってしまえば、料理提供までに何十分もかかることになり、質の高いサービスを提供することはできなくなるでしょう。
そうなると、当然店の評判が悪くなり、客足も遠のいて売上が立たなくなってしまえば、最終的に廃業に追い込まれてしまう可能性もあります。
ワンオペ営業によってサービスの質の低下しては意味がありませんので、飲食店としてのサービスの質を担保するような試みが必要です。
本来やるべき作業をおろそかにしない
ワンオペ営業でネックになるのは、本来やるべき作業に手が回らなくなることです。
お客さんが少ない日であれば対応できていても、忙しい日になると接客や料理の提供に追われ、洗い物や掃除をこなす余裕がなくなってしまうことがあります。
実際に、ワンオペをおこなっている飲食店の厨房に溜まった洗い物やゴミがSNSに投稿され、炎上してしまった事例もありました。
本来やるべきことができていないと、残業や翌日の従業員が対応するなど、他の部分に影響が出てしまう可能性もあります。
ワンオペでやるべき作業ができなくなる場合は、業務内容・オペレーションの見直しや受け入れ人数のコントロール等が必要になるでしょう。
従業員の不満による離職
ワンオペ営業は従業員に負担がかかる営業方法です。
そのため、従業員の不満がたまりやすく、離職につながる可能性があります。
特に、事前にワンオペ対応について伝えられていない場合は、当然不満がたまります。
「こんな店で働いて大丈夫なのかな…」と、不安に感じるスタッフも出てくるでしょう。
「ワンオペで対応してもらうことを事前に伝えておけばいいのでは?」と考える方もいますが、仮に事前に了承していたとしても不満がたまらないわけではありません。
ワンオペの大変さは実際に体感してみないとわからないため、例え了承していても辞めてしまう可能性を考えた上で人材確保・採用していく必要があります。
過労による体調不調
例え来店するお客さんが少ない暇な店舗であっても、一人で回すのは意外と大変です。
ワンオペ営業を週に何回もこなしていると、肉体的にはもちろん精神的にも疲労して体調不良に陥ることがあります。
従業員が働くことが困難になってしまった場合、他の従業員にしわ寄せがいくため、別の従業員まで体調を崩してしまうといった負の連鎖が起きる可能性があります。
従業員の負担を分散するシフト構成や、休める環境作りも必要なります。
また、負担が増加することで離職率が高まる点にも注意しなくてはいけません。
ワンオペ営業は、メディアでも問題視されるほど注目度が高く、ワンオペ営業で従業員が働けなくなったことが世に出ると批判の的になる可能性もあります。
労働基準法に抵触しない環境作り
ワンオペ営業で店を回す場合、スタッフの労働時間ルールを違反してしまう可能性があります。
従業員を雇う場合、労働時間や休憩時間、休日など労働基準法を遵守する必要があります。
特にワンオペ営業で気をつけなくてはいけないのが「休憩時間」です。
勤務時間が6時間を超える場合は45分間、8時間を超える場合は1時間の休憩時間を設ける必要があります。
しかし、一人で店舗を回さなくてはいけないため、満足に休憩が取れず、労働基準法に抵触した結果、法的に罰せられる可能性があります。
必ず休憩時間を確保できる環境作り・シフト構成を行いましょう。
まとめ
たびたび社会的な問題として取り上げられる飲食店のワンオペ営業について紹介してきました。
ワンオペ営業には、人件費の削減や人手不足問題の解消など飲食店の経営者にとって魅力的な部分があるのも事実です。
しかし、ワンオペ営業にはさまざまな注意点がある営業スタイルです。
そもそも、ワンオペ営業を実施しないと経営が立ち行かないというのであれば、そのビジネスは破綻してしまいます。
そうならないためにも、無理のない出店計画を立て、従業員にワンオペ営業を強いらなくても済む店舗にできるよう尽力するようにしましょう。