飲食店を経営する上で気をつけなくてはならないのが「食中毒」です。
一度でも食中毒を発生させてしまうと「食中毒を発生させたお店」として評判が広がってしまうため、店舗の経営にも大きく影響しかねません。
そこでこの記事では、飲食店の経営者が知っておくべき食中毒について紹介していきます。
- 飲食店で発生する食中毒の原因
- それぞれの原因に対する食中毒対策
- 万が一食中毒を発生させてしまった場合の対応方法
などについて解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
飲食店の経営者が知っておくべき「HACCP」とは
HACCPは衛生管理手法の一つで、食品管理の工程ごとに確認・記録していくという手法です。
今では国際的な衛生管理法となっています。
令和3年の6月1日より、飲食店を含む食品等事業者は、このHACCPに基づいた衛生管理が義務化されました。
義務化されたということは当然罰則も設定されており、行政処分がくだされてしまうケースもあるので、飲食店の経営者や管理者は注意しなくてはいけません。
食中毒を引き起こす主な菌の種類
食中毒は細菌や寄生虫によって引き起こされる場合がほとんどですが、発生の原因となる細菌や寄生虫は一種類だけではありません。
飲食店における食中毒の原因となりうる代表的な細菌や寄生虫は、以下のようなものがあげられます。
食中毒を引き起こす主な細菌・寄生虫の種類
種類 | 特徴 |
---|---|
カンピロバクター | 鶏・豚・牛の腸内にいる細菌食肉や肉の加工品についていることが多い |
ノロウイルス | 食中毒を引き起こす代表的なウイルス牡蠣についていることが多い |
アニサキス | 寄生虫の一種で、海産物に付着しているサバ、アジ、カツオ、イワシ、イカなどに付着していることが多い |
飲食店で食中毒が発生してしまう原因と対策
飲食店で食中毒が発生してしまう主な原因としては、以下の6つがあげられます。
- 仕入れている食材の質が低い
- 食材を正しい方法で保管していない
- 適切な方法で調理していない
- スタッフが不衛生
- 店内が不衛生
- 体調の悪いスタッフを働かせてしまっている
それぞれの原因の詳細と具体的な対策方法について解説していきます。
仕入れている食材の質が低い
飲食店が利用する食材の仕入れ先はさまざまですが、仕入れている食材の質が低いと、食材が原因となって食中毒が発生してしまう可能性があります。
食材を仕入れた後の管理は店舗側で徹底できますが、仕入れる前の管理まではおこなえません。
業者の食材管理方法がずさんだと、仕入れる時点ですでに食材が傷んでしまっている可能性もあります。
食材は、安く仕入れれば仕入れるほど利益があがるので安い業者は魅力的に感じられますが、安さを重視するあまり食材の質が低くなってしまうのは避けるべきです。
食中毒の可能性が高まるのはもちろん、食材の質が低いと料理の味も落ちるので、高い品質の食材を提供してくれる業者から仕入れるようにしましょう。
食材を正しい方法で保管していない
仕入れ先の選定にこだわって質の高い食材を仕入れられるようになったとしても、その食材を正しい方法で保管していなければ食中毒を発生させてしまう可能性があります。
食材には常温保管に適しているものもあれば冷蔵保管しなくてはいけないものや、冷凍保管が必要な食材もあります。
適切な方法で食材を保管できていない場合、食材の質が悪くなって味が落ちてしまうだけでなく、菌が発生・繁殖して食中毒を引き起こしてしまいます。
食材の正しい保管方法がわからない場合は、仕入れ先の担当者に確認して正しい方法で保管するようにしてください。
適切な方法で調理していない
食中毒を発生させないためには、調理や提供の仕方にも配慮しなくてはいけません。
特に肉類は注意が必要で、基本的に生で提供するべきではありません。
生食用の肉もありますが、食中毒のリスクがゼロになるわけではないので、子供やお年寄りへの提供は避けるべきとされています。
参考:https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kenkou/anzen/food_faq/chudoku/chudoku05.html
また、火の通し方にも注意が必要で、表面をかるく炙るだけで十分殺菌できる食材もあれば、中までしっかりと火を通さないといけない食材もあります。
店舗で取り扱う食材は、必ず正しい調理方法や提供方法を把握した上で取り扱うようにしてください。
店主やスタッフが不衛生
飲食店では、店主やスタッフが調理をおこない、料理や飲料を提供します。
汚れたままの制服で働いていたり手を洗わないまま調理していたりすると、そこから食材や食器に細菌が付着し、食中毒を発生させてしまいます。
そもそも店主やスタッフが不衛生な店ではお客さんも料理を楽しめないので、衛生管理に関するルールを決め、遵守するようにしましょう。
店内が不衛生
店主やスタッフの衛生管理を徹底していたとしても、店舗が不衛生だと食中毒の発生を抑えることはできません。
また、不衛生な店では食事したいと思ってもらえないため客足が遠のく可能性もあります。
掃除のルールや当番などを決めて定期的に掃除をおこない、店内を常に清潔な状態に保つようにしましょう。
体調の悪いスタッフを働かせてしまっている
小規模な店舗など最低限の人数で営業している飲食店にとって体調不良による欠員はかなりの痛手になりますが、体調不良のスタッフをそのまま働かせてしまうのも危険です。
体調不良のスタッフが先述した細菌を保有している場合、そのスタッフが原因となって食中毒が発生してしまう可能性があります。
ノロウイルスなど感染力の強い菌も多いので注意しなくてはいけません。
また、スタッフだけでなく、店主の体調にも注意する必要があります。
店主やスタッフの体調不良による食中毒の発生は、体調管理の徹底と体調のよくないスタッフをきちんと休ませるようにすることで未然に防げるようになります。
食中毒が発生した場合の適切な対応方法
食中毒は、お客さんが店舗を後にしてから発覚することがほとんどです。
食中毒が発覚する流れは主に以下です。
- お客さんが直接店舗に体調不良を訴えて食中毒が発覚するパターン
- 病院に行って治療をおこなった後でお客さんが保健所に通報して発覚するパターン
お客さんから問い合わせがあった場合は、食べたものや症状の聞き取りをおこない、病院の受診を勧めましょう。
店舗で提供した食材による食中毒である場合は治療費をこちらで負担しなくてはいけないので、診断表や明細を保管しておくよう伝えてください。
その後、保健所に連絡して、食中毒が発生した疑いがあることを申告します。
申告後、保健所による立ち入り調査がおこなわれます。
立ち入り調査が完了した後は処分がくだされますが、3~4日程度の営業停止となることがほとんどです。
お客さん自身が保健所に通報した場合は、保健所からお店に連絡が入り、立ち入り調査がおこなわれ、処分決定となります。
営業停止処分が解除された後で以前と同じように営業していると、再度食中毒を発生させてしまう可能性があります。
そのため、食中毒を発生させてしまった場合は、3~4日の行政処分の間に再発防止策を考え、対策を徹底して二度と食中毒が発生しないようにしなくてはいけません。
まとめ
飲食店で発生しやすいトラブルの一つである「食中毒」について紹介してきました。
飲食店で食中毒が発生してしまう原因は一つだけではないため、発生を防ぐのは決して簡単ではありません。
しかし、一度でも食中毒を発生させてしまうと店舗を存続させること自体が難しくなってしまう可能性もあるので、食中毒の発生は何としてでも避けるべきです。
食中毒が発生する原因を把握し、それぞれの原因に対する対策を講じることで食中毒の発生を抑制できるので、ぜひ対策に取り組んでみてください。