食材の仕入先の選定は、飲食店を開業する前にやっておかなくてはならない重要なタスクの一つです。
しかし、ひとくちに「仕入れ先」と言ってもその種類はさまざまで、仕入先によって特徴やメリット・デメリットが異なります。
そこでこの記事では、飲食店における食材の仕入れ先について紹介していきます。
- 代表的な6つの仕入れ先
- 仕入れ先の選び方
- 仕入れのポイント
について解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
飲食店が利用できる食材の仕入れ方法
飲食店が利用できる代表的な食材の仕入れ先としては、以下の6ヶ所があげられます。
- 小売店
- 業務用専門の小売店
- 市場
- 生産者
- 卸売業者
- 卸売業者(通販)
それぞれの仕入れ先を重要な3つの項目で比較した結果は以下のとおりです。
仕入れ先 | 価格 |
---|---|
小売店 | ✕ |
業務用専門の小売店 | △ |
市場 | ◯ |
生産者 | ◯ |
卸売業者 | ◯ |
卸売業者(通販) | △ |
仕入れ先 | 商品数 |
---|---|
小売店 | ◯ |
業務用専門の小売店 | ◯ |
市場 | ◯ |
生産者 | ✕ |
卸売業者 | ◯ |
卸売業者(通販) | ◯ |
仕入れ先 | 配送 |
---|---|
小売店 | △ |
業務用専門の小売店 | ✕ |
市場 | △ |
生産者 | △ |
卸売業者 | ◯ |
卸売業者(通販) | ◯ |
それぞれの仕入れ先について詳しく解説していきます。
小売店(近隣の商店やスーパー)
個人で経営するような小規模の飲食店がよくお世話になるのが、スーパーや商店街にある精肉店、八百屋などの小売店です。
ただ、小売店で食材を仕入れるメリットは品数くらいしかありません。
一般の消費者を相手に商売しているので価格が安いわけではなく、価格が安い店舗は質がよくないなどそれなりの理由があります。また一般的な卸売業者では、月末締めで翌月支払いの「掛け払い」を小売店では利用することができない可能性が高いです。
一般的に店舗への配送は受け付けていません。最近はネットスーパーなどのサービスも普及してきているため配送してもらえる場合もありますが、配送料がかかるうえに価格が高く設定されている傾向にあります。
小売店は、食材が足りないときなど緊急の仕入れ先として利用するのがおすすめです。
業務用専門の小売店
近年一般の消費者の間にも広く認知されて人気が高まってきているのが、業務用専門の小売店です。
業務スーパーなどが有名で、安い食材を大量に仕入れたいときに大活躍してくれます。
一般的なスーパーよりも価格が安く、なおかつ量が多いというメリットがあります。
ただ、お店の近くにこのような業務用専門スーパーがあると便利ですが、一般のスーパーマーケットと同様にどの町にも必ず存在するわけではありません。
配送のサービスはなく掛け払いにも対応してないため、利便性の部分で見劣りしてしまう仕入れ先です。
市場
質の高い食材を安く仕入れることができる市場は、飲食店の経営者が積極的に活用したい仕入れ先の一つです。
生産者から仕入れた食材が直接並ぶため鮮度が高く、間に入る業者が少ないため価格もリーズナブルです。
また、配送や掛け払いに対応している業者も少なくありません。
しかし、市場は一種のプロフェッショナルたちが交流する場であり、独自のルールや、調達から支払いまでのプロセスが複雑で、信頼性の高い供給業者との良好な関係を築くことも難しいため、新たに事業を始める経営者にとっては敷居が高い存在です。
生産者
交渉力や目利き力は必要にはなりますが、それぞれの生産者から直接仕入れるという方法もあります。
生産者から直接仕入れる場合、間に業者が入らないのでかなり安く仕入れられます。
ただ、食材の品質はピンキリなので、良い食材を提供してくれる生産者かどうかを自分で見極めなくてはいけません。
また、それぞれ生産している食材が異なるので、複数の生産者との交渉や契約が必要になります。
卸売業者
飲食店の仕入れ先として定番と言えるのが、食材の卸売業者です。
価格が安くて品質が安定しているうえに、大量の仕入れにも対応しています。
さらに、配送にも対応しており、なおかつ掛け払いでの支払いが一般的なので利便性の高さもピカイチです。食材の価格や品質、対応には業者によって大きな差があるため業者選びが重要になりますが、仕入れ先の候補としては第一候補になるでしょう。
ただし、卸売業者との契約にもいくつかの課題があります。
新しい商品を注文する際には見積もりの手続きが必要であり、急ぎの場合には対応しきれないことがあります。また、一つだけ必要な商品を購入する際に、ケース売りしか提供されないこともあります。さらに、配送の頻度も事前に決まっていることが多いため在庫の管理が難しい場合などがあります。
卸売業者(通販)
最近は通販システムを活用した食材の卸売業者も増えてきています。
特徴や注意点は卸売業者とほとんど一緒ですが、通販サイトから手続きや注文がおこなえるという利便性の高さが大きなメリットです。
一方、一般的な卸売業者のように専任の担当者がついてくれるわけではないので、良好な関係を築きにくく、交渉などもおこないづらいという通販ならではのデメリットもあります。
仕入れ先の選び方
飲食店の経営がうまくいくかどうかは仕入れ先の選定にかかっていると言っても過言ではありません。
そこで把握しておきたいのが、仕入れ先の選び方についてです。
実際に仕入れ先を選ぶ際、注目するべきポイントとして、次の6点があげられます。
- 食材の品質
- サービス
- 担当者の対応
- 価格
- 小ロットでの仕入れ
- 掛け払いでの仕入れ
それぞれ詳しく解説していきます。
食材の品質で選ぶ
繁盛する飲食店を作る上で、品質の高い食材の仕入れは欠かせません。
そのため、いかに品質の高い食材を仕入れられるかが仕入れ先を選ぶ上での一つのポイントになります。
食材の質は価格に比例するので仕入れ予算によって品質も異なります。
予算内でできるだけ質の高い食材を仕入れられるところを選ぶようにしましょう。
サービスで選ぶ
飲食店にとって食材の仕入れは毎日のようにおこなうルーティーンワークです。
サービスが充実していない仕入れ先よりも、サービスが充実している仕入れ先を選んだ方がビジネスをスムーズにおこないやすくなります。
そのため、よりサービスの充実している仕入れ先を選ぶようにしましょう。
サービスの内容は業者によって異なりますが、購入した食材を店舗まで届けてくれる配送サービスは必須です。
また、急な依頼にも対応しているかや夜間の仕入れにも対応しているかも重要になります。
担当者の対応で選ぶ
仕入れ先として卸業者の利用を検討しているのであれば、担当者の対応の質や能力はしっかりと確認しておきたいところです。
いくら質の高い食材を提供してくれる業者やサービスが充実している業者であっても、担当者の対応が悪いと仕入れをおこなうたびにストレスを感じてしまいます。
対応能力が低いと、卸す食材の種類や数を間違えるなどのミスが発生する可能性があり、店舗運営にも影響してしまうので、対応能力が低い業者との付き合いは避けたいところです。
価格で選ぶ
仕入れ価格は収益に大きく影響するので、仕入れ先を選ぶときは食材の価格にも注目して選ばなくてはいけません。
先述したとおり価格と食材の質は比例するので、価格が安ければ何でもいいというわけではありません。
しっかりと品質を担保した上で、仕入れ価格の抑制をおこなうべきです。
同じ食材でも仕入れ先によって仕入れ値が大きく異なることは多々あるので、複数の仕入れ先の価格を比較しながら探すようにしましょう。
小ロットでの仕入れに対応しているかどうかで選ぶ
卸業者の中にはある程度まとまったロットの仕入れにしか対応していないところがあります。
指定されたロット数を消化できるのであれば特に問題ありませんが、時には食材を少しだけ仕入れい場合もあることを考えると、小ロットでの仕入れにも対応している仕入れ先の方が便利です。
仕入れる食材の数が多くなると食材ロスが多くなり、仕入れ用予算の高騰や収益にも影響するため、小ロットでの仕入れも快く引き受けてくれるところを選ぶようにしましょう。
掛け払いに対応しているかどうかで選ぶ
仕入れ先から食材を仕入れる場合、当然食材代を支払わなくてはいけません。
ただ、飲食店では急に食材が必要になることも多く、客の入りが多く忙しい時や手持ちがないときなど支払いを後でまとめておこないたくなることも多々あります。
そんなときに便利なのが「掛け払い」です。
掛け払いは、期間を区切り、その期間内の注文を後からまとめて請求する形式なので、仕入れる度に支払いをおこなう必要がありません。
ただ、掛け払いは信用によって成り立つものであるため、業者に信用してもらえるかどうかが重要になります。
食材の仕入れで失敗しないために押さえておきたい3つのポイント
食材の仕入れで失敗したくないのであれば、食材を仕入れる上でのポイントも把握しておきましょう。
食材の仕入れで失敗しないために押さえておきたい主なポイントとして、次の3点があげられます。
- メインの仕入れ先とサブの仕入先を用意しておく
- 食材によって仕入れ先を分けるのもアリ
- 仕入先を定期的に見直す
それぞれのポイントについて詳しく解説していきます。
メインの仕入れ先とサブの仕入先を用意しておく
飲食店を始めようと考える方の中には、仕入れ先を1箇所に絞ろうとする方が結構な割合でいます。
仕入れ先を一つに絞った方が効率的に仕入れられるため、効率性を重視するのであれば一つに絞るべきですが、仕入れ先を限定することはあまりおすすめできません。
リスクを避けるためにも、複数の仕入れ先を併用するべきです。
実際にメインの仕入れ先を一つ用意しておき、サブの仕入れ先もいくつか用意している飲食店も少なくありません。
仕入れ先を管理する手間はかかるものの、リスク分散の観点からみると理にかなっています。
食材によって仕入れ先を分けるのもアリ
飲食店にとって重要な「味」にこだわるのであれば、食材によって仕入れ先を分けるのも良いでしょう。
「A社は魚の仕入れに強く、B社は肉の仕入れを得意としている」など、業者によって得意としている食材があるので、それぞれの業者から得意としている食材のみを仕入れるという方法です。
また、それぞれの食材の生産者とつながり、食材ごとに生産者から直接仕入れるという方法もあります。
この方法は手間がかかりますが、質の高い食材を仕入れるのにはうってつけです。
仕入先を定期的に見直す
特定の仕入れ先との付き合いが長くなってくると、つい仕入れ先を固定したくなってしまう傾向にあります。
しかし、ビジネスを成長させたいのであれば、仕入れ先は定期的に見直さなくてはいけません。
仕入れ先を見直すことで、より良い条件で食材を卸してくれる仕入れ先が見つかりやすくなり、既存の仕入れ先に対しての刺激にもなります。
まとめ
飲食店における食材の仕入れ先について紹介してきました。
飲食店の食材の仕入れ先にはいくつか種類があり、それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なります。
定番の仕入れ先としては卸業者があげられますが、必ずしも卸業者を選べばいいわけではありません。
最適な仕入れ先は店舗や業態によって異なる上、お店として重要視するポイントによっても異なります。
今回紹介した仕入れ先の選び方や仕入れで押さえておきたいポイントを参考に、自分の店舗に最適だと思われる業者から仕入れるようにしましょう。