ビジネスチャンスは、1994年に創刊された起業家や経営者などのビジネスパーソン向け企業・新規事業の専門情報誌です。主にフランチャイズや代理店ビジネス、ECに関する取材を行い、新たなビジネス情報を掲載しています。
この記事は、ビジネスチャンス 2020年12月号の記事になります。
「間借りビジネス」をご存知だろうか。
既存の飲食店が、休業時間を利用して、普段は店舗に置いていない商品を販売して収益を上げるビジネスのことだ。
例えば居酒屋なら、ランチタイムに当たる11時から仕込みが始まる14時頃までの時間を活用して、弁当や総菜、カレーなどを販売するといった具合だ。
販売する商品を自前で開発する飲食店もあるが、一方で、収益モデルの確立されたフランチャイズに加盟するケースも増えている。
「間借りビジネス」の最新事情を取材した。
休業時間を活用した飲食店のサイドビジネスうな丼、弁当、唐揚げ、ドリンク、etc...
新型コロナウイルスの影響で脚光を浴びる「間借りビジネス」。その一番の魅力は、既存の店舗を使って売上を上げられることだろう。
新たに店舗を借りる必要もなければ、高額な設備を購入する必要もない。そのため、少ない投資で始めることが可能だ。フランチャイズに加盟しても、短期間で初期費用を回収することができる。
問題は、魅力的な商品を販売することができるかどうかだ。
既存店の空き時間を利用することで、賃料や設備投資を抑えられたとしても、光熱費と人件費はかかる。売上が立たなければ、収支はもちろん赤字だ。
これでは「間借りビジネス」を始めた意味がない。すべては商品にかかっていると言っても過言ではない。
しかし、自前で魅力的な商品を作るのは、言うほど簡単なことではない。弁当や総菜は競合が多く、価格競争に巻き込まれやすい。
安くすれば売上は上がるかもしれないが、利益はほとんど出ないか、最悪の場合、赤字だ。
「良いものを作れば多少値段が高くても売れる」と考える人も中にはいるだろうが、ただでさえコロナ禍で消費者の財布の紐が固くなっている中で、ランチタイムにプチ贅沢をしようと考える人が、果たしてどれだけいるだろうか。
そこで注目されるのが、「間借りビジネス」のフランチャイズ(ライセンス販売含む)だ。
ブランドと商品、オペレーション、ビジネスモデルが確立されているため、失敗のリスクが小さく、また、既存の店舗や設備などをそのまま利用するため、初期投資も少額で済む。
加盟金や保証金、研修費等はかかるものの、早期に回収できる公算は高い。
すでに売上や客数の減少に苦しんでいる飲食店にとって大切なのは、即効性だ。確実に儲かるとしても、事業の立ち上げまでに数カ月かかるのでは意味がない。
「間借りビジネス」は2週間前後で立ち上げられるものが多いので、すぐに売上が欲しい飲食店に最適なビジネスだと言える。
是非、この機会に一度、導入を検討してみてはいかがだろうか。
CASE:クリスピー・チキン・アンド・トマト(E-MATE:東京都新宿区)
「クリスピー・チキン・アンド・トマト」は、飲食店経営のコンサルティングなどを手掛けるE‐MATE(東京都新宿区)が立ち上げた韓国風チキンチェーンだ。
既存の飲食店を対象に、新たなメニューとしての導入を提案している。
原価率わずか17.5%の韓国風唐揚げ客単価は2500円
飲食店が既存のキッチンを使って始める場合にかかる費用は、加盟金50万円と保証金15万円のみ。これとは別に、ブランド使用料が月額5万円かかる。
本部からの仕入れとなるパウダー(唐揚粉)とソース、パッケージなどの支払いについては月末払いのため、加盟時に用意しておく必要はない。鶏肉については各店舗で自由に取引先を決めることができる。
少ない投資で開業できる点も魅力だが、一番の強みは儲かる仕組みにある。
一般的な唐揚げ専門店の場合、平均客単価は400〜600円程度だが、「クリスピー・チキン・アンド・トマト」の場合は2500円と、非常に高い。
これは主流の個単位販売をせず、あえて9〜10個を最小ロットにして販売していることによる効果だという。
価格だけ聞くと高いように感じるが、1個当たりの単価は非常に安い。
▲最小ロットを9〜10個にすることで客単価を引き上げてる
原価率にも儲かりの秘密はある。
一般的なテイクアウト専門店では、原価率は35%前後だと言われている。一方で「クリスピー・チキン」はわずか17.5%と、通常の半分の水準(鶏肉を本部から仕入れた場合)。
既存店に併設するビジネスモデルのため、賃料や店舗取得費がかからず、経費を差し引いてもかなりの利益が残ることになる。
テイクアウト、デリバリー、店内販売など、販売形式は自由だ。
★ CRISPY CHICKEN n’ TOMATO(クリスピー・チキン・アンド・トマト)の独立・開業情報 ★
CASE:まがりDEバナナ(ドリームアシスタント:東京都新宿区)
都内を中心に、店舗数を増やしているバナナジュースの専門店がある。
ドリームアシスタント(東京都新宿区)が運営する「まがりDEバナナ」だ。
現在、フランチャイズ5店舗を含め7店舗を展開。さらに、これとは別に6店舗の出店が決まっているという。
空き時間を利用して販売するバナナジュース
「まがりDEバナナ」は、飲食店を対象にした間借りビジネスのフランチャイズだ。
「空き時間を利用して売上を上げたい」あるいは「集客の目玉になるような新しい商品が欲しい」と考える飲食店が加盟している。
実際、専門店として出店するケースもあれば、既存のメニューのラインナップに加えて提供している店舗もあるという。
新宿の1号店は、バナナドリンクの提供はデイタイムのみで、夜はバーになるというスタイルだ。
加盟金、ロイヤリティ不要のフランチャイズビジネス
特徴は低コストで開業できること。
必要な設備はミキサー1台のみ。通常は加盟金が87万7000円と、ロイヤリティが売上の8.77%かかるが、現在はいずれも無料としている。
開業時にかかるのは、営業に必要なスターターキット(ポロシャツ、のぼり、包材など)の購入費約万円のみ。包材は随時、本部から仕入れる。
簡単な研修を受けて、最短3週間程度で開業できるという。やってみて思ったほどもうからないと感じたら、いつでも辞めることも可能だ。
基本のバナナジュースはMサイズが500円、キリンサイズが600円。カップル用の恋バナナは800円。これに好みに応じてトッピングが追加できるようになっている。
▲甘くクリーミーな味わいが人気の秘密
バナナジュースに目を付けた理由について前田晃介社長は「実は今、バナナジュースはちょっとしたブームになっています。都内だけでも専門店は50以上あるのではないでしょうか。美味しいものを提供すれば、十分、ビジネスになると考えました」と話す。
▲前田晃介社長(左)と1号店のスタッフ
美味しいバナナジュースの秘密は、厳選した素材とその作り方にあるという。
しっかり熟成させたバナナと特別仕様の牛乳を、絶妙なバランスで混ぜ合わせることで、砂糖を一切使用しなくても、甘く、クリーミーなバナナジュースができあがるのだそうだ。
その美味しさゆえに、店舗はどこも繁盛。中には1日に100杯売る店舗もあるという。
「リピート客を増やすために、専用アプリも開発しました。各種クーポンの利用はもちろん、スタンプを貯めることもできます」
▲リピート客を増やすために携帯用アプリも開発
当面の目標は100店舗。同社は「まがりDEバナナ」を間借りビジネスの第1弾と位置づけ、今後も新たなビジネスをリリースしていく計画だという。
この記事は、ビジネスチャンス 2020年12月号の記事になります。